木曜日, 5月 26, 2022
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「アーティストは作品とインスピレーションの間に立つ存在」浅間明日美インタビュー

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刺繍の方法論で制作する浅間明日美は、自身のことを「器」と形容する。「インスピレーションを忠実に作品化することが大切」と話す彼女の制作スタイルは、自身でもシャーマン的と呼んでいるが、だからこそ混じり気のない純度を保っているのかもしれない。

刺繍をメインにした作品が多い印象ですが、元々刺繍は学ばれていたのでしょか?
-いいえ、最初はドローイングから始めました。しかも独学でスタートしたんです。元々はイラストレーターとして活動していて、そこから自分の表現をやってみたいと思うようになり、クライアントワークではない、アートの方へ進みました。
刺繍へ移ったのは、子供の病気がきっかけ。その間は活動を休止していたのですが、でも制作はしたかったし、表現もしたかった。でも中々ペインティングの時間と場所の捻出は難しい。どうにか生活に地続な方法で制作が出来ないかと考えてたどり着いたのが刺繍だったんですね。


Honkadori Bacchus, 33×33cm

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生活の中で無理なく出来る美術的表現が、つまり刺繍だったと。刺繍も独学ですか?
-そうですね。だから、たまにワークショップを依頼されることもあるのですが、正直教えることが出来ない(笑)。自分なりのルールややり方はありますけど、特に体系化されているわけではないんです。あくまで自分の生活圏で出来る表現を探していった結果たどり着いた方法なので、いわゆる刺繍を学んだ人のやり方とは、きっと違うかもしれません。加えて、私の中では、あくまで美術の表現方法だということも大切で。だから工芸とか手芸になりたくはないと思っています。

「刺繍という方法を使ったアートワーク」である以上、美術家としての視点やスタンスがマストになりますよね。その辺りはどう考えていらっしゃいますか?
-私の制作は、どちらかというとインスピレーション型なんですね。シャーマン的と言うとおかしいかもしれませんが、まさに「降ってくる」という感覚。モチーフが頭に降ってきて、それをどれだけ丹念に、作品として外に出すことが出来るか。それが私の制作のスタイルなんですね。


Honkadori Giuliano, 33×33cm

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つまり浅間さんにとってアーティストは、インスピレーションと作品の間に立つ存在なんですね。
-あくまで私の場合ですけど、そうですね。でも、だからこそ私自身の精神状態はすごく大事で。個人的に、作品は目に見えない部分、例えば作り手の精神状態による変化を受けてしまうと思っているので。だから、自分の精神状態が安定しない時には絶対に制作しない。必ず作品に反映されてしまうと思うので。朝も禊をしてから制作をするんですけど、そうしてインスピレーションをどれだけ純度の高い状態で受け取ることが出来るか、どれだけ純度の高い状態で作品化できるかが重要になってくるので。自我が入ってしまうと濁ってしまう。
昔は「アーティストじゃなくてシャーマンだね」と言われてコンプレックスに感じていましたけど、今は気にならない。むしろアイデンティティになっているのかなと。私の場合、自分の頭で考えるよりずっといい作品が出来ますから。
制作の流れとしては「思いつく」→「スケッチ」→「キャンバスに刺繍」といった感じなのですが、あまり気をてらったり、妙な意識は挟まないようにしています。


Enlightenment, 33×33cm

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最後にお聞きしますが、これまで作品制作続けてきて、変わった部分や変えていきたい点はありますか?
-基本的には無いかもしれません。私の作品には原型があるので、いかにそれを丁寧に掬い上げることができるかが勝負なので。だからずっと気をつけているし、大事にしている点は、やはり自分の心身ですね。具合悪かったり精神的に悪かったりすると、濁るじゃないですけど、良い作品は出来ない。いい器になっておくことが大事なんです。

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Shinzo Okuokahttps://www.tricera.net/
1992年東京都出身。大学でインド哲学を学んだ後出版社に勤務し、アート雑誌と神社専門誌の副編集長として雑誌及び書籍の企画・編集に携わる。2019年にスタートアップ企業である株式会社TRiCERAに参加、日本初の現代アート専門の越境ECの開発及びアーティストのマネジメント、自社オウンドメディアの立ち上げを担当する。特技は速筆で、雑誌時代には1ヶ月で約150ページを1人で取材・執筆した。

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The Shape of Time – 齊藤拓未/さめほし/東麻奈美/林香苗武/野澤梓によるグループショー –

この度TRiCERAでは12月19日(土)から2021年1月19日(土)の会期にて齊藤拓未/さめほし/東麻奈美/林香苗武/野澤梓の5名のアーティストによるマルチプル作品のグループショーを開催致します。 今回の展示について 美術史家 ジョージ・キューブラー(1912-96)による『The Shape of Time: Remarks of the History of Things』からタイトルを引用した本展では、美術作品という事物にまつわる時間にフォーカスしながら参加アーティストの作品とその活動を紐解き、また鑑賞体験の提案として平面メディウムの一つであるプリンティングを採用します。  絵画と版画は、美術の諸領域において、しばしばアイロニックな関係を結びます。画材などマテリアル、ストロークや筆触など作家の身体的痕跡によって複雑な情報と構造を持った物質である絵画に対し、版画はそのイメージを抽出し、紙面に固定する記録のような機能を持ちます。 絵画は、当然ながら時とともに傷つき、すり減り、まるで氷が溶けるようにゆっくりと摩耗していきます。その事実は絵画が平面という物体であることを気づかせ、同時に物質としての絵画という新しい鑑賞の見地をもたらしますが、一方の版画は作品の物質性や身体性を離れ、イメージの記録と伝達により忠実なメディアであり、それぞれは異なる時間の流れ方を持ちます。 美術作品にまつわる時間について言及すると同時に、今回は参加するアーティストの表現を時間というアングルから紐解くことでその表現性の現在について解釈を試みます。  大人になるにつれ薄れつつある感情を思い出させる風景に、幼少期の自分をそこに描き込んでいく齊藤拓未。現在と過去の二つの時制を一つの画面に描く彼女の作品には、不可逆である時間の順行とそこにまつわる感傷性が豊に、静かに物語られています。  さめほしはデフォルメされた少女の顔の上に崩壊と生成というベクトルの異なる現象を描いてきました。本展に登場する作品は、先述のアンビバレントな性格に加え、顔にケーキをぶつけることによって造形性の崩れを新しい局面から模索する作品です。  東は美少女フィギュアや玩具をモチーフに、回転という動きを通し、時間をキャンバスに閉じ込める実験的な作品を描いてきました。順行する時間、反復する時間、そして運動する物体にまつわる考察を視覚言語によって提示し続けます。  さらに林香苗武は、平面における速度をテーマにしながら制作を行ってきました。絵画とは言うまでもなく静止物であり、画面において現象としての運動は現れませんが、彼女はあたかも未来派の作家らが行ったように、停止する画面における速さの問題に取り組んできました。 野澤梓はステッカーボムという、ストリート文化から派生した、主に自動車やオートバイのカスタムにて行われるステッカーを支持体の表面が見えなくなるまで重ね貼りする手法を絵画に引用的に使用します。像が重ねて描かれた彼女の絵画は、多層的な構造を持ち、それが内包する時間は非常に複雑であり、それこそがイラストレーションと峻別され絵画として存在する意義を獲得しています。  キューブラーは作品それ自体にまつわるスタイルやシリーズの流れについて解析を試みましたが、本展ではそこから敷衍し、制作という行為の結果である絵画でなくその記録であるプリンティング作品を展示により、あくまでもアイロニックな方法によって美術作品にまつわる時間の流れ、その物質的な性格について考察する機会を目指します。紙面において静かに物語られるアーティストらの像を通し、その奥にある絵画そのものについて考える機会をお楽しみください。 参加アーティストについて   齊藤拓未     1996年東京出身。2020年武蔵野美術大学日本画専攻卒業。主なグループ展に「日々のあわ」(高円寺pocke / 2019/ 東京)、 「fog」(exhibition space CLOSET/2020/東京)、「obキュレーション展 neo wassyoi」(hidari zingaro / 2020 / 東京)、主な個展が「tender...

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アートを通して光と時間を求める大平奨が個展を開催します。 TRiCERAの注目作家の一人である大平奨は、東京・京橋のギャラリーひのきにて個展を開催しています。今年で70歳になったが、彼は決して負けずに 芸術家であることのキーパワーである創造への情熱と永遠のエネルギー。 本展、大平奨の個展は、大平奨の創作意欲の状況証拠となる。大平奨は1949年山口県に生まれ、現在は日本とフランスを拠点に活動しています。 作品の印象は、若い作家が作ったかのようなどこかオシャレな感じ。日常の風景を淡々と描いているので、抽象画と具象画の中間のような作品になっています。 また、彼の作品の特徴の一つは、円の浮遊感です。彼の作品では、風景を描きながらたくさんの円を描いています。円を通して抽象的な概念である「時間」を視覚化し、それを大きさや色の異なる円を描くことで表現しています。晋にとって、自分の作品は光と時間を求める作品であると考えています。 今回の展覧会では、彼の絵画だけでなく、新作も展示します。長らくアクリル画を描いてきた作家ですが、現在はアクリル画から写真を使ったミクストメディア作品へとフィールドを広げています。写真のひび割れはすべて金色の線で覆われ、透明な円が浮かび上がっています。 同じ風景をベースにしながらも、素材によって表現が異なるものもあれば、絵画として表現されたもの、写真作品として表現されたものもあります。これらの作品では、素材の違いによる感覚の変化を楽しむことができます。 国内だけでなく、海外でも年に2、3回は展覧会に参加し続けている大平。これだけ精力的に活動していても、決して満足することはなく、今の頻度以上に海外での展覧会を開催したいと考えているそうです。アーティストとしての長いキャリアを経て70歳を迎えた大平氏だが、その創作へのエネルギーは今もなお強力だ。彼の仕事への感覚が年を取らないのは、作品作りへの飽くなき情熱と努力があるからなのかもしれません。 大平奨個展(ギャラリーひのき) 開催日:2019年10月7日(月)~10月12日(土) 2019年10月7日(月)~10月12日(土)時間。11:30~19:00 土(最終日):11:30~17:00 記事を書いた人:Jeongeun Jo韓国出身、日本在住。東京藝術大学大学院美術研究科を卒業したTRiCERAのメンバーの一人。彼女自身もアーティストとして活動している。 

人間にとっての動物、もしくは動物にとっての世界の話。

レオナルド・ダ・ヴィンチの『小貂を抱く貴婦人』とは−言うまでもなく著名な作品ではあるけれど−上品そうな女性がオコジョを腕に抱いているにおける、54.8 cm × 40.3 cmのペインティングだ。オコジョは純潔性の象徴らしいが、一方で14-5世紀の貴族の間では著名なペットでもあったという。 人と動物の共生の歴史は長く古く、遡ればラスコーの時代から人々は動物を飼い慣らし、時に愛玩し、時に狩のパートナーとして生活を共にしてきた。 古代エジプトでは動物に名前を与えていたし、古代ギリシャでは亡くなった犬のために墓穴を掘り、墓石を建て、飼い主はその墓にメッセージを刻みつけて悲しみを形容する習慣があった。 作品の詳細はこちらから かくも長い歴史だが、とはいえ、動物が絵画の題材となり始めたのは、動向としては、主に17-8世紀頃のことだった。 博物学の一環として動植物がイラストレーションされることは多々あった。けれど「動物画」として、つまり絵画の一ジャンルとしてフラン・スナイダーズやジョージ・スタッブスのように動物をメインをモチーフとした画家たちの登場はその時期を待たなくていけない。 では、なぜ人は動物の絵を描くのだろうか。 第一に、ダ・ヴィンチ のような象徴的用法もあるだろう。実在する動物ではないが(少なくとも筆者は見たことがない)、例えばユニコーンは、少女の清らかさを指し示すモチーフとして15世紀の絵画界で使用された。 この象徴という見方は、絵画の中に動物がいることについて一種のストーリーを読み取ることを許すだろう。例えば少女と動物をモチーフにするSELUGI KIMの作品を見てみよう。 作品の詳細はこちらから 彼女の絵画の中の少女が一緒にいるのは友人でも家族でも、ましてや学校の先生でもミッキー・マウスでもなく、一匹のフラミンゴだ。 「文化と愛という名のもと、社会では偽装が多く行われている」と彼女は語るが、その言葉と共に鑑賞すると、フラミンゴと少女しかいない世界は社会の矛盾や清廉さとは反対の、ある種の理想郷的な世界を物語っている様を読み取りたくなる。 作品の詳細はこちらから 動物の「イメージ」という点ではどうだろう。 例えば狼は『赤ずきんちゃん』『三匹のこぶた』など物語の中では常に悪役だ。そして狼と聞けば、どうだろう、善良的なモラリストをイメージすることは少ないのではないか。この物語が作り出した狼の運命について、苅谷はそれとなく言及している。 人間によって紡がれ、語られて来た物語のおかげ嫌われ者になってしまった狼。ある種のイメージ操作の結果をを、そしてそのイメージを固定し続ける者たちの姿を、彼女は公平な視点から描き出している。 作品の詳細はこちらから ペットという視点ではどうだろうか? 人はペットを、自分たちの異種の家族を、どう描いてきただろう。そのストーリーはどうだろうか。 萩原のペインティングにおけるペットは、ある意味、現代の風俗が見て取れる。 〈we use botanical shampoo〉と名付けられた作品に描かれる犬たちは、思うに、普段からボタニカル・シャンプーで身を清めているに違いない。 作品の詳細はこちらから 反面、ペットの視点から描かれた作品も存在する。久保俊太郎の絵画がそれだ。...

Feature Post

クリップしておくべき展覧会:Rina Mizuno.

Photography by MIYAJIMA Kei About Mizuma Art Gallery 1994年にSueo Mizumaによって東京に設立され、流行にとらわれない独自の視点で、日本とその周辺地域のアーティストをグローバルな舞台で紹介してきました。 よりグローバルな視点でアーティストを紹介するため、2012年にシンガポールにスペースを開設し、インドネシアやニューヨークにもスペースを持ち、アートバーゼルや国際見本市への出展も意欲的に行っている。 MIZUNO Rina, A Tile Flower, 2019, Oil on canvas, 53 × 53...

恋の形と色を巡って

 アーティストが取りあげるテーマが壮大であったとして、しかしその創作の源泉となるのは意外にも身近なものであったりする。特に恋と愛などはその際たるものだ。  世界的に名の知れたピカソの《泣く女》もモデルとなった愛人、ドラ・マールや、モネの「散歩、日傘をさす女性」も嫁のカミーユの存在無くして生まれなかった名画であろう。そもそも「恋人たち」という主題は、西洋美術史では伝統的なものであった。  本記事では「恋愛」「恋人たち」という普遍的テーマにアーティストたちがどんな現代的エッセンスを加えているのか。是非ともご覧いただきたい。 Imai Atsushi 作家の詳細はこちらから Tea Ercoles 作家の詳細はこちらから 中村成二/Seiji Nakamura 作家の詳細はこちらから Jose Cacho 作家の詳細はこちらから Delta N.A 作家の詳細はこちらから 奈倉珠生/Tamao Nagura 作家の詳細はこちらから

Yuna Okanishi: 筆跡の中に禅を見つける

“書道は単に線を引くだけではなく、線と線の間の空間も大切にしています。” Yuna Okanishi 若い頃から墨と紙のモノクロームの世界に惹かれていたYuna Okanishi。7歳の時には書道を正式に学び始め、書道への理解を深めていく。彼女にとって書道とは、単に線を描くことだけではなく、線と線の間の空間、つまり空虚さと充実感の二項対立を意味しています。 黒は空虚を表し、白は充足を表します。何が本当で何が本当でないかわからない世の中で、何が本当に大切なのかを見極める努力が必要だとOkanishiは考えています。 今回のインタビューでは、Okanishiの作品の原点、Okanishiにとっての作品とは何か、そして禅の思想が創作活動に与えた影響についてお話を伺いました。このインタビューは、長さとわかりやすさのために軽く編集されています。 現実と想像の世界を描く "空虚さと充実感 "の二項対立 書道から水墨画まで 簡素化と禅のライフスタイル 書道は命 岡西由奈のアートを購入する場所 現実と想像の世界を引き寄せる 水墨画家になるまでの経緯を教えてください。 7歳の頃から書道の練習をしていて、2010年に初めて個展を開きました。水墨画をMr. Sekizawaに習おうと思ったのは2012年のことでした。Sekizawaは日本画・水墨画の巨匠として有名なKawai Gyokudoに師事されていて、その技術は本当に並外れていました。 私はSekizawaから水墨画を学ぶことが大切だと思い、Sekizawaに連絡を取り、すぐにSekizawaの指導を受けることになりました。この時、私は全力で墨書画の習得に励み、多くのことを教えていただきました。 Yuna Okanishiの大と小 Sekizawa先生から学んだ一番大切なことは何ですか? 授業中に何度も楽しい? と何度も聞かれたのを覚えています。関沢さんはいつも「よかった、よかった!」と喜んでくれました。 Sekizawaさんは、「楽しいことが一番の描き方」とよく話してくれました。書道は自分の心の状態を映し出す鏡なので、楽しんで描いていたかどうかは見ている側にも伝わります。また、制作過程そのものを楽しむことが、芸術を追求し続けるための鍵であるとおっしゃっていましたが、私は作品を制作する際に常に意識しています。その楽しさは、作品だけでなく、自分自身にも広がっていくので、制作中は本当に楽しいと感じます。 "描く一本一本の線は、自分の姿、自分自身を表している" 7歳から書道を習っていたそうですが、その影響はいかがでしたか? 一本一本の線が自分を表していると思います。例えば、単純な直線を描けなかったら、自分に自信がないとか、自信がないとか、そういうことですよね。 あなたの心が正しい場所にない場合は、それは線の中で表示されます;あなたが続けるようにまっすぐなストロークは蛇行し始めるでしょう。しかし、あなたの心が設定されている場合 - あなたの心の最も深い部分から自分自身の確信しているとき - あなたの描画は、これを反映します。 私にとって、私は書道はあなたの心と精神を表すように非常に人生そのもののようなものだと思います。私の書道がますます洗練されていくにつれ、私はより成熟し、自分の人生をより明確に理解するようになりました。ある意味、書道は人生のバロメーターのようなものです。 6 by Yuna Okanishi "空虚さと充実感 "の二項対立 アートシリーズ「空虚と充満」のコンセプトはどのようにして生まれたのですか? 子供の頃からずっと考えていたことなので、"生まれた "わけではありません。真実とは何か、嘘とは何か?私が見ている世界は現実なのか?私の目で見ている世界は、私の魂の目で見ている世界と同じなのだろうか?このような疑問は、私の心の中に常に存在していました。 Yuna Okanishiのパラレルワールドとのコミュニケーション 例えば、私は小さい頃、キャンバスは粒子に分解できるので、その小さな粒子の上に世界が存在していて、その粒子の上に何かが生きているのではないかと信じていました。私たちが生きているこの世界、私たちが生きている宇宙が、誰かにとってのもう一つの「粒子」に過ぎないとしたら?もしかしたら、私たちはバービー人形のように弄ばれているのかもしれません。 真実とは何なのか?これは、私がまだ答えを出せていない問いです。 大人になってからも、これらの疑問は私と一緒に残っていた。私が見ている光は何億光年も前に作られたものかもしれない。では、今、私が見ている光は何なのか?真実とは何か、嘘とは何か。 "空虚そのものを描いているかのように 白い空白をどう残すかを いつも深く考えています" 人に会っても、こんなことを自問自答し続けています。もしかしたら、自分と仲良くなれない人の中にも、自分が学ぶべきことがあるのではないかと。真実は意外なところにあるし、その逆もある。私は、「空虚と充足」の世界で答えを探して生きているのだと思います。 私たちは生まれる前からすべてを知っていて、意図的に生まれてきた両親のもとで育つことを選んでいるのだと思います。何かに抑圧されているわけではないので、この人生の最初の数年間の記憶はとても貴重で大切なものだと思います。作品を制作する際には、このような人生の初期段階の記憶を常に思い出すようにしています。 あなたの作品のどのような点が他のカリグラフィーアーティストとの差別化になっていますか? よく見ている方から「私の書道は独特のスタイルを持っている」と言われることがありますが、正直なところ、それを自分で発見するには至っていません。ただ、私がいつも気にしているのは、空虚さそのものを描くように白い余白をどう残すかということです。書道だけではなく、文字の周りの空間をどのように見せるか、ということにもこだわっています。 書道から水墨画へ 普通の書道と墨絵の違いは何ですか? 書道は自分の心や精神状態がとてもよく反映されています。例えば、心が不安定な時に線がぼやけてしまう。私の心を映し出してくれます。 カタナ(剣) Yuna Okanishiさんの 墨書画は、水墨画に見られる技法を用いて描かれています。もちろん、書道のように精神状態を反映したものではありますが、墨書画は文字のように露骨なものを描くのではなく、より抽象的なイメージや概念を描くことを目的としています。 技術的な面では、書道では二度書きが禁止されていますが、墨書画は、軽い筆の上に重い筆を重ねて、インクの自然な流れを楽しみながら重ねていくものです。そういう意味では、水墨画に近いですね。 書写画は、書道と日本画の中間に位置する芸術だと思います。 簡素で禅的なライフスタイル 禅の哲学は、あなたのライフスタイルと芸術の両方に見出すことができます。禅の考え方を取り入れたきっかけを覚えていますか? 子供の頃、私はアトピーに悩まされていて、母は介護に苦労していました。私は市販のものにアレルギーを持っていたので、自然のものしか使えませんでした。 アトピーをきっかけに、母は環境への意識が高まり、環境に優しい生活を送るようになりました。そんな母を見て育った母の生き方には、何事も大切にする、物を大切にするなど、禅の思想に通じるものがありました。禅の本を読み始めた時に、その精神に真実があると思い、禅哲学を修行したいと思いました。 禅哲学に興味を持った理由はもう一つあります。忙しい現代社会の中で、歩きながらスマホを使い、食事をしながらテレビを見ていると、その瞬間を生きづらくなるのはおかしいと感じました。禅の修行では「今を生きる」ことを実践すると聞いて、2014年に非常に厳しい修行で知られる永平寺で学ぶことにしました。 先ほど、「書道は心を映すもの」とおっしゃっていましたが、ご自身の成長が作品にどのように影響しているのでしょうか。ご自身の成長は作品にどのような影響を与えているのでしょうか? 私の作品には曲線を描く線が多いのですが、この曲線は時間の経過とともに大げさになってきていると思います。 それは自然の曲線であり、雲海であり、アーチを描く枝でもあります。自然を愛することで自分をもっと発見していくと、海に潜ったり、大自然の中に出てみたりして、世界の「曲線」をもっと発見して、自分の線がもっと曲線になっていくことがよくあります。私の作品は私を表しているので、私の作品がどのように進化してきたかに満足しています。 書道は命 私は、書道は人生だと思っています。 書道の練習をするときは、まず「臨書」の文字を写すことから始めます。 臨書の練習には三段階の段階があります。 第一に、文字の形を真似る「桂林」です。これにより、師匠の技を習得することができます。 第二に、書家の意味や思想を理解し、その思想に浸りながら文字を描く「入林」。 三つ目は、今まで学んできたことを忘れて、自由に描いて、自分だけのオリジナルなものを作る「毛琳」。 この段階は、人生そのものにも当てはまると思います。生まれた瞬間から、周りの人の真似をして言葉を覚え、人を理解しようとしながら自分の個性を伸ばしていく。 書道には、人生と似た要素がたくさんあります。だからこそ、書道は人生だと思っています。 Yuna Okanishiさんのアートを購入する場所 TRiCERAでは、Yuna Okanishiの作品を多く取り扱っております。他の日本の現代書家の作品に興味がある方は、書道アートのページをご覧ください。

アートで見る夏景色2020 -暑中見舞い後編 –

8月最後の週は、多くの人にとって夏の最も感傷的な日々。子供たちにとっては夏休みの終わり、大学の多い街では学生達と共に活気も戻り、親御さんたちは、学校再開前の準備で忙しくする時期。この一週間は、誰もが楽しい夏の思い出に浸り、残された日々を惜しんでいるものだ。 プールサイドでのパーティー、それとも「ステイホーム」で安全に過ごす時間、それとも田舎でのリフレッシュ、何があなたのお気に入りだろうか。シリーズ第1部ではそんな夏模様を描いた作品をご紹介した。 こちらから Soft summer by Irina Laube 54 x 54 cm 「海と山どっちが好き?」この一見無害なように聞こえるが、二極分化をもたらす質問。両方とも近い田舎で育ち、山の稜線と入り組んだ入り江の絶景を誇るカナダのバンクーバーで数年過ごした筆者としては、一択を迫られると途方に暮れてしまう。だが、どうやらTRiCERAアーティスト御贔屓のモチーフは海とビーチのようである。この人気テーマと共に、夏の魅力的な抽象画もご紹介したい。 Summer Days by Alexander Levich 35 x 45 cm Labyrinth by Alexander Levich 60 x 100...

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